友人関係

6月10日、大学の友人の誕生日だった。憂鬱だった。

そもそも僕の大学の友人たちは、よくあるように、お互いに誕生日を祝う習慣があるのだが、僕だけは毎年その慣例から外れている。僕が仲間内で一番誕生日が早いのに全くアピールしないからである。無理なのだ。祝われてもうまくリアクションがとれず場を気まずくさせてしまう。それは周りの人もわかっていて、無理やり祝おうなどとはしない。どうでもいいというのもあるだろうが、まあ、優しい人たちだから、気を遣ってくれているようである。僕も、誕生日周辺は大学を休んで徹底的に避けている。

さて、今日は当然友人の誕生日なので、当然みんなで何かを買おうということになる。そうなると問題になるのは僕の扱いである。”こいつに金を出させるべきか、それとも出させないべきか”、また気を遣わせるのである。もう、嫌です。

小中高と、なぜか僕を崇拝する人がいた。小中の人は、小学二年生のときにこちらに引っ越してきて、気づいたらどこにでもついてくるようになっていた。僕がサッカークラブに入ればそのクラブに入り、僕がやめればその子もやめ、同じ塾に入り、作文に恥ずかしげもなく親友のまるまる君と書き、毎日教室の前で僕を待ち構え(彼の教室は二階で僕の教室は三階だったにも関わらず、である)、僕のつまらない冗談にも笑い、僕のどうでもいい一言も大切にするような人だった。最近聞いた話では、僕がプリントの切れ端に落書きした「生きてるってすばらしい!」という文にいたく感動し救われたらしい(最初その話をされたとき僕は全く覚えてなくて「え?そんなこと書いたっけ?」と言い、これでは彼の想い出を傷つけてしまうと慌てて思い出した!と言った、そのあと本当に思い出した)。

今も、同じ塾でバイトしているが、少年だった頃に比べるとかなり距離が遠い存在になった。今でも会えば気兼ねなく話すが、バイトで顔を合わせない限りはお互い会わないし連絡もしない。ただ、あいつは授業で毎年僕の少年の頃のエピソードをいろいろ話すので、生徒づたいにそれを聞くたびに、昔を思って懐かしむのみである。親友だって言えなくてごめんね。怖かったんだ。

高校の人は、本当に宗教のように僕を崇拝していた。同じ部活だったのだが、他の部員たちにもあれは宗教と言われるレベルだった。むしろ今でも「××はまだまるまる教やってんのかよ」と言われている。僕がいない時でもいつも僕の話をしているらしくて僕の一挙一動は弓道部に筒抜けだった。僕がいる時も常にまるまるはすごいという話を延々としていて嬉しいを通り越して怖かった。承認欲求の塊である僕が怖がるのだから相当である。というか、彼はアスペルガーじみたところがあって、当時今よりもずっと偏屈だった僕はよく彼の一言に怒っては「もう二度と口を聞かない」と宣言したものだった。もちろん、三日と経たないうちに僕から話しかけてしまうのだが。そうでなくても僕はいつも教室で浮いてる彼のことを嫌いだと公言していて、でも彼は僕のことを好きだと公言していて、そうして傍目に見ればいつも一緒と、こう書くとやはり僕が悪い人である。申し訳ない。今はお互いコミュニケーションがずっとうまくなって、ときどき会っては仲良く遊んでいる。このあいだ僕と彼ともう一人の部員と三人で、僕が彼女と別れたときにラブホ男子会をした。そこで、僕と彼は高校のとき同じ人を好きだったと知った。ある程度察してはいたけど。しかしそのヒロイン、それはクラスメイトであり僕らの部活の部長であったのだが、どう見ても僕らを好きではなさそうだったので、なにも起きずじまい、本当によかった。

僕らは高校卒業後お互いに彼女を作り晴れてホモ疑惑を払拭し、彼女はまだ処女だが大学の先輩を好きらしい。彼から聞いた。去年あたりに部長から誘って彼と部長とで2人で飲んでいて正直心穏やかではなかったのだが、それはその恋愛相談だったらしい。まあ僕はまだそのとき彼女いるの知られてなかったしね……。多くは望まないから、彼らとはずっと良い友人でありたい。しかし果たして、もしこれから状況が変わって、部長が彼と付き合ったとしたら、僕は祝えるだろうか?彼は高校時代仮に僕と部長がつきあってたら祝福してたと言い切っていた。僕は間違いなく嫉妬と劣等感でおかしくなっていただろう。僕は本当に悪い人である。君のほうがずっと立派な人間だったんだ。僕は褒められるような人ではない……。

かなり話が逸れたが、要するに今まで僕は完全に受け身な、そして1対1の友人関係しか築いてこなかったのである。大学は、そうはいかないようである。いや、大学にもやたらと仲良くしてくれて、俺はまるまると一番仲が良いんだと言ってくれる人はいるが、、、、、書いていて気づいた、変わったのは僕だ、他人に怯えるようになり、周りを振り回さなくなり、じっとしているようになった。昔のように強引に今度はどこそこに行くぞ、と連れ回すようなことは全くしなくなった。むしろ誘いを断ってばかりである。高校の友達は無理やりラブホにだって連れて行くのにね。

こんな自分語りを最後まで読んだ人がいるとは思えないが、書いているうちに少し発見があったのでよかった。こんな文章を最後まで読んでくれた人がいたとしたら申し訳ない。ありがとう。