あなたのようになりたかった

昔、自分は己の価値観を強く持っている人間だと思っていた。
周りがどうであれ自分は自分。幸福は主観的なもので、自分が満足できれば人と比べてどうかなんて関係ない。
むしろ、他人は無限に存在するので、比較しはじめたら終わりがない。上には上がいるのだ。

簡単なことだ。

 

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自分には才能があると信じていた。子供の頃から周りの友達と自分は違うと感じていた。それは理解力であったり、ゲームの強さであったり、周りを巻き込む力であったりした。

今話したいことではないので深くは言及しないが、僕は高校生くらいまではむしろ人を集めて何かをするのが好きで、そうでなくともおしゃべりで社交的で、自分の友達と友達が友達同士になるといいと思っていて、コミュニティを自分の周りに作り出すタイプの人間だった。

しかし変わった。今でも1対1であればなんとかなるが、どんどん人と関わるのが怖くなってしまった。人間の集団が怖い。

 

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自分には才能があると信じている。天才ではなかったようだけれど、それでも普通の人が理解するのに苦労するような難しい概念もすぐにわかるし、人よりものを覚えるのも早い。プログラミングの適性もけっこうあって、今プログラマとして社会に出ても、会社の新人の中ではかなりできる方になれるはずだ。文章を書くのも、今は自己満足の散文ばっかりだけど、誰かに読んでもらうための文章を書くのだって好きだし、人前で話すのだって、今は怖くなってしまったけれど、きっとすぐに……

 

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世の中には自分より才能があって、自分よりひとつのことに時間を費やしてるやつがたくさんいる。

何かで輝きを放つには、才能よりもかけた時間がものを言うことが多い。

文章にしたって書いて見せるというのを続けなければはじまらない。

同い年でも優秀な人達はすでに高度な技術と知識を持ち、様々な経験を積み、輝かしい経歴を引っさげてさらに刺激的で面白い世界に入っていく。

僕は……僕は今までの人生で何をしてきたんだろう?

 

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何が原因でこんなに苦しいのだろう?僕は平均的な人より才能も能力もあるはずだ。けれど、どう見ても僕よりたいていの人間のほうが幸せそうだ。負けず嫌いな性格?価値観の弱さ?彼女をもっと大切にしなかったから?身の程知らず?遊んでばかりいたから?いつまでこんな堂々巡りを続けるの?自分は自分、じゃなかったの?

 

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あなたのようになりたかった。