オリオン

正月の気だるさを押しのけながら犬の散歩に出かけた。何もやる気が出ず睡眠も不規則になり始めていて、今日はとにかく日中寝ないようにこらえていたので眠くてしょうがない……。歩きながらなんとなくスピッツの楓を選曲して聴き始めた。眠気を振り払うように空を見上げるとオリオン座があって驚いた。この街では星座どころか星ひとつ見えないと勝手に思い込んでいた。今年の元旦のことを思い出し始めた……


今年の元旦、僕はかつての高校時代の部活の同期5人で、新宿からそのうちの一人が通っている大学へ向かっていた。年越しを新宿で迎えた後、初日の出をどこで待つか相談した結果その人の配属されている研究室にいることにしたのだ。元旦の特別運行の電車に乗って午前2時過ぎに大学の最寄駅に着いた。駅から続く大通りには他に誰もいなかった。隣を歩いていた友人が空を見て、
「星がたくさん見えるね。」
と言った。
「うん……あれは北斗七星だね。」
「え、どこ?」
友人は星座を知らないようだった。自分も詳しいわけではないので簡単に解説をした。
「こっちにはオリオン座も見える。」
僕は反対側の空を向いて言った。みんな立ち止まって空を眺めていた。
「すごいね、こんなに星が見えるなんて。」
「そうだね……普段は何にも見えないもんね。星座をこうやって見るのなんて何年ぶりだろう。」


普段は何にも見えないのではなく、見ていなかっただけだったのだ。楓の再生が終わって流れ星が再生され始めた。