自転車

バイト先の社員から中古の自転車をもらって次の日に鍵を失くして乗れなくなった……と思って、そのうち自転車屋でつけかえてもらわなきゃなあ、と思っていたのですが、普通に鍵置きにありました。自分でも意味がわからない……。

しかし僕の性質からいって、遅かれ早かれこの鍵は消える運命だと思い、スペアキーもないので自転車の鍵を取り替えるために自転車屋に行ってきました。

 

お店に着いて自転車屋の入口から覗いてみると、ふたりの男性が自転車を挟んで向かい合っていて、ふたりとも僕の存在に気づいてちらっと目をやり、そして自転車に目を戻しました。

完全にどちらかが店員で自分に話しかけてくるだろうと思っていた僕は面食らってそのまま立ち尽くし、三人の男がしばらく自転車を見つめていました。

少し経って我に返り、おそらくオドオドしてないほうが店員だろうと推測して「すいません……自転車の修理をお願いしたいんですが……」と話しかけたら「いや俺は客だから」と言われ恥ずかしい思いをしました。なんで自転車屋でこんな思いをしなければならないんだろう……と思いながら店員に改めて話しかけました。

 

僕「あっあの、修理をお願いしたいんですけど」

店員「あっはい」

僕「鍵を取り替えたいのと、漕ぐと変な音がするのでそれもお願いします」

店員「わかりました」

僕「ありがとうございます」

店員「……(無言で見つめてくる)」

僕「……(無言で見つめ返す)」

僕「……じゃあそれでは」

店員「あっ待ってください鍵を選んでください」

僕「えっあっ……はい……あっなんでもいいですのでじゃあ」

店員「あ、あの種類もいろいろありますから」

僕「ああ……あ、そうかナンバーキーとかもありますもんね、よく鍵をなくすのでナンバーキーのほうが良いかも」

客のおじさん「それならナンバーキーだと数字を忘れちゃって余計まずいんじゃないのか?」

僕「数字を暗記するのは得意なので大丈夫です!」

おじさん「おお、そうか、それならいいな」

僕「じゃあこの黒いのでお願いします」

店員「あっいや……いろいろ選べるので……」

僕「えっ……だから黒を……」

店員「いや、数字がいろいろありますので……」

僕「あっ……えっいや数字はなんでもいいです」

おじさん「そりゃ数字なんてなんでもいいよな!ガハハ!」

 

文字だと伝わりづらいですが、店員さんがオドオドしていたので自分もいつも以上にオドオドしてしまって、まるで初めて会った異民族同士が物々交換をおこなっている場面のようになっていました。ガハハおじさん(勝手にあだ名をつける)がずっと腕組んで僕たちのやりとりを見守ってたのもけっこう謎でした。

ねむいのでおわります。